抗癌剤とビタミンサプリの併用について教えてください。
36歳 男
2011/3下旬に直腸癌診断、
4月中旬に腹腔鏡手術を受けました。
結腸と直腸の境で肛門からは遠かったため、人工肛門は免れました。
5/2に病理検査結果が出て、
・ステージIIIa 患部付近リンパに1箇所転移
・高分化ながら、深部に粘液癌の所見
侵襲度高い
・リンパ侵襲 ly3
・静脈侵襲 v2
術後は、
・CEA 1.9
・CA19-9 17
と落ち着いています。
また、5/30(月)~補助化学療法として、FOLFOXを使用予定です。
少しでも再発率を下げたいと、
いろいろな健康によさそうなこと(いわゆる代替療法)を行っています。
その中で、ビタミンE等の抗酸化物質について、
併用肯定派と、否定派と、お医者さん?
や癌治療に当たっている栄養学者の間でも意見が分かれているようです。
↓否定的意見
http://www.1kampo.com/topics-6a.html
↓肯定的意見
http://d.hatena.ne.jp/appleflower/20091004/p1
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/search/index.php?query=%A5%D3%...
抗癌剤とビタミンサプリの併用について、詳しい見解をお尋ねしたいです。
ちなみに、今とっているサプリ類は下記になります。
ビタミンB群 マルチサプリにて必要量の300%程
ビタミンC 2000mg
ビタミンE 300mg
亜鉛 50mg
セレニウム 60mg
コエンザイムQ10 60mg
メラトニン 5mg~20mg(今後摂る予定)
↓私の治療情報ブログ
http://gombu.blog59.fc2.com/
アドバイスよろしくお願いします。
実に研究熱心で、感服いたします。病理Stage Ⅲaでly3、v2ならば、標準治療として補助化学療法(あなたの場合FOLFOX)を行う、というところまでは、エビデンスもありますし、私が担当医だったとしても同様の治療を行います。
将来的には肝・肺転移再発、局所再発を念頭にサーベイランス(監視)を行っていくことになるでしょう。
切除前の腫瘍マーカーが高値であったのならば、CEAやCA19-9の推移も1-2ヵ月ごとにチェックしてゆくことになるでしょう。
術前にPET-CT検査は受けられましたか?術後3ヵ月程度までは、手術によるアーチファクト(人工的な影響)があるので判断が難しくなりますが、それ以上経過したら、一度実施しておくのも有効です。一般的な造影CTだけではピックアップできないような大腸癌(結腸・直腸癌)の転移巣や再発巣の検出力はPET-CT検査は高いと思います。
さて・・・サプリメントについてですが、正直私自身も充分な知識を持ち合わせていません。(じゃあ回答するな?^^;)
実際に国内で抗癌剤治療に関わるサプリメントの効果について、推奨されるようなエビデンスは恐らく無いのではないかと思います。学術的には日本補完代替医療学会あたりが、サプリメントの効用についての学術的な議論を行っていると思いますが、一般化されたようなものは聞きません。
がん治療におけるサプリメントの併用についての分かりやすい総論的な説明がありました。
http://www.ganmen-kobayashi.jp/1211/SasshiA.pdf
その点、米国は「統合医療」としてサプリメント研究が盛んに行われています。そう言う意味では、質問者さんがピックアップされているように米国発の情報がこの領域に関しては中心になるでしょう。
抗酸化サプリメントと抗癌剤の併用についての議論は、癌の種類、サプリメントの種類、抗癌剤の種類、抗癌剤以外の治療の有無などによって、極めて多岐にわたるので、単純に善悪の判断はできません。
「抗癌剤はその酸化能によって抗癌作用を発揮する」という視点自体が、一体どの抗癌剤のどの作用のことを指しているのかが不明確であり、まして抗酸化サプリメントがどの程度の影響を及ぼすかは、理論的に言っても、経験的・統計的に言っても全くの未知数です。
例えば、「水に食塩を加えると凝固点が下がる」という事実がありますが、1トンの水に0.1グラムの食塩を加えても凝固点は殆ど降下しません。「理論」と「臨床」は多くの場合、一致しないということが言いたいのです。
抗酸化サプリメントの抗癌剤治療に及ぼす影響についてもメタアナリシスがあるようですが、結論を見てみると「悪い影響はない」という結論がせいぜいで、「プラスになった」とまでは言えないようです。
それから、注意しなくてはならないのは、特に大腸癌に対する抗癌剤は、この10年(2000年以降)になって頻用され出したものが多いです。
イリノテカン 2000年 米国でIFL療法として
オキサリプラチン 2002年 米国
ベバシズマブ 2004年 米国
セツキシマブ 2004年 米国
つまり、逆に言えば2000年以前の論文に登場する「抗癌剤」は現在中心薬剤として使用されているこれらのことでは無い、ということになります。言い換えれば、2000年以前の論文での議論は、過去の抗癌剤についての話であり、既に時代遅れの内容と言うことになってしまいます。
まあ現状では、「害」にさえならなければサプリメントを摂るかどうかは個人の判断と言うしかないでしょう。あくまで科学的な論拠を踏まえながら費用対効果を充分に考慮して摂取すべきです。
腫瘍内科医です。
ビタミンやミネラル、低分子有機物などのサプリメント類は
癌の再発を抑える、発癌を抑えるなどの作用は証明されて
いません。少なくとも通常の状態で「益にならない」ことは分
かっています。
一方、抗癌剤を投与されている状況では、いくつかのサプリ
メント、民間療法は明確に害をもたらします。
有名なのがセント・ジョーンス・ワート(セイヨウオトギリソウ)
という薬草で、この薬草の成分が肝臓の特定の酵素を誘導
するため、その酵素で代謝される薬物の効果がおちてしまい
病気がコントロールできなくなった、という事例があります。
これは民間療法・サプリメントに限らず、他の医薬品でも
起こりうるので、ご自身が服用されている薬品は全て主治医
およびかかりつけ薬剤師に申告することが必要です。
基本的にビタミン類は偏りのない食事をしていれば不足する
事はありませんので、お金をかけるだけムダです。水溶性の
ビタミンB/Cは過剰になる事はありませんが、ビタミンEは過
剰症がありえますので、バランスのよい食事を取る方針に
切り替えることをお勧めします。
コエンザイムQ10も、代謝酵素の関係で併用すべきでない
ケースがあったと記憶しています。基本的に使うべきでない
物質の一つです。
微量金属は体内でどう作用するか正確には分かっていません。
前述したように「益にはならない」という事くらいです。
ですから、化学療法中に用いる理由はありません。
メラトニンは下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が
産生されるときの副産物で、色素沈着などの作用があると
されています。ホルモンですから、むやみに投与したら何ら
かの不調が来るであろう事は想像に難くありません。
FOLFOXの比較的稀な副作用に手足症候群、色素沈着が
ありますが、メラトニンにより色素沈着がひどくなる可能性
は否定できません。
化学療法は厳しい臨床試験でその効果の再現性を証明
されてきた治療です。それを用いて治療しようとするなら
併用する治療が「通常の状態で益にならない」というよう
ないい加減なものであってはなりません。
前述のようによかれと思ってやった事が全く裏目に出て
しまう事もあります。私は「バランスのいい食事を摂り、
本当に必要な薬物以外は飲まないで下さい」と説明して
います。
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